◆アトピー性皮膚炎

日本皮膚科学会コメント(毎日新聞2001/04/07)


■ はじめに(アトピー性皮膚炎に対する基本的な考え方)

アトピー性皮膚炎(以下、アトピーと略)は慢性の経過をたどる病気です。
残念ながら、短期間ですっかり治るということはありません。

アトピー(atopy:一般的に環境因子をアレルゲンとした過敏症の状態をいいます。I型アレルギー反応はIgE抗体と関連しており、ぜん息、枯草熱、アトピー性皮膚炎などの疾患群をさします)。

アトピーについては、偏った考えに惑わされない「正しい知識」を持つことが大切になります。

子供のアトピーは、成長とともに自然に経過して良くなっていく場合が多いです。自然の回復力を妨げず、重症化させないようにしていくことが大切です。

ステロイドはアトピーの原因から治す薬ではなく、湿疹症状を改善させるための薬です。

アトピーの治療に「極端」や「あせり」は禁物です。

<アトピーとは>

アトピー性皮膚炎の特徴は、強い痒みと、根治が難しいことにあります。痒いかrといって皮膚を掻くと、炎症を悪化させ痒みが強くなる悪循環に陥ります。
アトピー性皮膚炎は、季節によって症状が重くなったり、軽くなったりすることがあります。一般には夏に悪化するタイプと冬に悪化するタイプに大別できます。
またアトピー性皮膚炎は、乳児期、幼児期、小児期、思春期、成人と年齢によっても、症状の現れかたが変化することがあります。


<乳児期>
生後1〜3ヶ月頃から、顔や頭部を中心に赤い発疹ができて、痒がることがあります。
赤ちゃん自身が掻きむしったり、抱いたときにお母さんの衣服などでこすったりすることで傷ができ、かさぶたになったりすることもあるようです。
湿疹はしだいに、胸から腹部あたりや、手首、足首に広がります。また頭にフケがこびりついたような湿疹ができることもあります。口の周りや胸の湿疹は食べ物の汚れや、よだれのために悪化するケースもあります。 けれども生後まもなく湿疹ができても、必ずしもアトピー性皮膚炎とは限りません。
「あせも」や「乳児脂漏性湿疹」という皮膚炎をアトピーと思い違いしてしまうことが、あります。

<乳児期・小児期>
3、4歳児のアトピー性皮膚炎は、皮膚が乾燥するのが特徴です。皮膚に現れる症状は、大きく分けて2つあります。
「苔癬化アトピー性皮膚炎」:ひじやひざの内側にシワができて、ゴワゴワとなる症状です。
「痒疹型アトピー性皮膚炎」:皮膚に褐色または紅褐色のポツポツが現れるものです。腕や足の外側、背中などに発疹することが多いです。鳥肌のようで、どちらの症状も、かゆみが強いので、つい掻くと、ひっかき傷から細菌感染して、トビヒ(水疱や膿疱が生じる)になってしまうこともみられます。

<思春期・成人>
乾燥状態は、12歳を過ぎる頃には、皮膚の脂の分泌が盛んになるので、改善されるケースが多いようです。痒疹型はどちらかといえば、症状が軽くなる傾向にあります。苔癬化は、範囲が広がることもあります。ひじ、ひざの内側がますます象の皮のように厚くなります。いずれにしても、根気よい治療を続ける必要があります。

治療法>
掻痒感がひどいため、これを抑えることが第一です。掻きすぎると病巣部が剥離して病態を悪化させる可能性があるからです。病院で処方されるアトピ−性皮膚炎の薬には、塗り薬や飲み薬があります。これらの薬には湿疹のかゆみを抑える働きや、アレルギーの症状を抑える働きがあります。

かゆみを起こす物質であるヒスタミンは、アレルギー反応が起きている身体の中で作られます。抗ヒスタミン薬があります。

抗アレルギー薬は、アレルギー反応を抑える薬です。

ステロイド軟膏は、皮膚の炎症を抑える薬です。

<除去食療法〜食生活をチェックしよう>
アトピーの治療としては除去食療法のみではありません。ただし、乳幼児で食物アレルギーの関与が強く考えられる場合には、一部の食品(おもに卵)を制限する場合はあります。 例え検査で食べ物にアレルギー反応が出ても、全く食べられないわけではありません。
毎日、どんなものを食べたか記録すると、「何を食べたときに皮膚炎が悪化したか」とか「この間まで食べるとかゆくなっていたものが食べられるようになった」などと、食べ物と症状の関係を観察できます。かゆみを誘発しやすいといわれる野菜(ホウレンソウやタケノコなど)や、カレー、コショウなどの刺激物、塩分や添加物が多く含まれる加工食品などは控えめに。大人の方はアルコールを控えめにしましょう。
特定の食べ物を食べることによって起こるアレルギー(食物アレルギー)があるかどうか、医師が検査をすることがあります。
検査の結果によって、アレルゲン(アレルギーを引き起こすもの)となる食べ物が分かったら、除去食療法を始めることもあります。アレルゲ
ンとなる食べ物を除いた食事をするのです。除去食は、必ず医師と相談をしながら続けてください。

日常生活で気をつけたいこと〜アトピー性皮膚炎を重くしないための注意事項

<皮膚を清潔に保つ>
肌の汚れは皮膚炎を悪化させる原因のひとつです。
また生活環境を整えることも大切です。

アトピー性皮膚炎の皮膚はとても敏感です。
炎症を起こしている皮膚は表面が傷ついて、
アレルゲンであるダニやほこりなども侵入しやすくなっていますし、細菌などでさらに炎症が悪化するおそれがあります。
皮膚は清潔に保ちましょう。石けんはお医者さんが勧めるものを使いましょう。汗やほこりは落としましょう、その際、硬いタオルやタワシでこすり皮膚に傷をつけないようにします。また皮脂を落としすぎないように、皮膚はカサつかない程度にします。

<生活環境をチェック>
ダニやほこり、カビはアトピー性皮膚炎の直接の原因となったり、悪化させるといわれます。こまめに掃除をしましょう。ふき掃除まで徹底すればカビの発生も防げます。
部屋の空気はときどき入れ換えましょう。 布団はできるだけ日光にあてて干しましょう。ダニの死骸はアレルゲンになるので、布団に掃除機をかけるのも効果的です。じゅうたんやぬいぐるみはダニ、ほこりが溜りやすいので、なるべく置かないようにします。洗たくした衣類はよく濯ぎましょう。洗剤が残っていると、皮膚を刺激することがあります。

最近は大人になってから、アトピー性皮膚炎が発症するケースも増えているようです。あるいは治癒したアトピー性皮膚炎が、再発するケースもあります。「アトピー性皮膚炎は、大人になれば治る」ことが多いのですが、アレルギー体質そのものが身体から、消えてなくなるのではありません。大人は皮膚が成長して、少々の刺激に対して抵抗力を持つようになっていると考えたほうがよいでしょう。

診断の確定には数回の外来受診が必要になる。アトピー性皮膚炎のための検査は存在しません。医師は、典型的な皮疹のパターン、患者の家族歴に基づいて診断を下します。

最後に

根本的な原因療法もなくまた治癒することもありません。けれどもある種の治療法は有用です。皮膚刺激性の物質との接触を避けるようにする事は皮疹の予防に有用です。


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