「サンシャインふじ」さよならクルーズと書いてある広告に目が止る。あまり豪華な船ではないが、その分値段が安い。それに「最後の航海」ってどんなものだろう。船の事を詳しく聞くつもりで電話を取り、話し込んでいるうちに申し込みも済ませてしまった。「サンシャインふじ」は大島運輸が1983年に建造。設計段階から不定期クルーズ船として図面を描き、スポーツデッキやダンスホール、スナックプラザ等を備えた純客船。貸切で行う航海が殆どだったので、あまり広く知られる事はなかったが、1989年に誕生した大型クルーズ客船「ふじ丸」の就航以来、一般向けのクルーズも販売する様になった。売りは大型客船と違い、格式ばらないこと。タキシードやテーブルマナーなんていらない。普段の生活そのままに船内で過ごせる気楽さがファンの間で人気を得ていた。

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1996年1月、乗船の日は朝から雨が降っていた。船内にはこの船に別れを告げにきた乗客が沢山乗っている。皆船好きな人ばかりだ。ご年配の方ばかりでなく、学生サークルや、会社の同僚と一緒に参加している若い人も結構乗っていた。どうもクルーズ船とは客層が違う、いったい何が乗客を魅了するのだろう?和室の大部屋にタイル貼りの大浴場、囲碁や将棋のできるコーナー、乗客の普段着は浴衣にスリッパ・・・。そんな日本人でしか味わえない雰囲気が良いからなのか、確かにクルーズ船には無い独特の「日本らしさ」が船内に漂っている。船は夜22時、東京港レインボーブリッジを通過して航海へ出る。初日の夜は船長によるトークショーやロープワーク教室が催された。