時効の話『ごめんなさい』
- このコーナーではみなさまからの時効の話をお待ちしております。
- あなたの居住都道府県名・お名前(仮名可)・年齢(省略可)・職業(省略可)・話をこちらへお送りください。
秘密厳守します。
- 神奈川県・ゆうさん(36)のごめんなさい
- わたしがまだ高校1年15歳、授業が終わり休み時間になるたびなぜだろう、自分でも笑えるぐらい必ずばきばきに勃起していた、「続・青い体験」願望少年の頃のお話でございます。
- わたしは野球部に在籍しておりました。その学校は前年の夏、甲子園に出場しておりました。これは、2年連続出場を目指すその予選前、100人ちかい部員が午後4時ごろから9時ごろまで熱く激しい練習に明け、そしてなんとか暮れようとしていた夏のことでございます。
- バッティング・連携プレイ・ノック、そして途中、やはり勃起もしながらのことも含めての熱く激しい何やかやが全て終わり、グラウンド整備もすみました。
- 監督のダメ出し、近づいてくる予選へのモチベーションの維持、鼓舞、下ネタ、下ネタ言うくせに「異性交遊は練習参加禁止ぞ」との警告。俺は下ネタを聞いた時の反射で300メートル南にある宮崎女子高の制服ギャルたちが自転車で太ももチラしながら疾走する姿を甘く思い浮かべ、ミーティングが終わりました。
- センター後方の部室前まで全員でダッシュします。そして横一列に整列し、今走ってきたグラウンドのほうへあいさつするのでございます。
- 「おっぷ」
- ありがとうございました、という意味でございます。
- この日も全て終わりました。入学した頃は、あまりに辛くて泣いたこともございました。しかし、この頃にはもう、その辛さにもなんとか慣れてきておりました。その余裕がそうさせたのでございましょう。わたしはホッとした勢いでなぜか鼻くそを思いきりほじったのでございます。
- こり。
- 鼻を熱く激しいものが流れ始めました。鼻血でございます。鼻の穴と穴を隔てる壁の血管をもほじったのでございます。鼻に冷たい空気がはいってきた時すぐにその空気を温められるようここの血管は比較的皮膚の表面近くにあるのでございます。ですから傷つきやすいのでございます。雑学でございます。
- わたしはとにかく上を向いておりました。血を止めるためでございます。上を向いていれば鼻血は止まるのでございます。雑学でございます。
- するといつもは厳しい3年生・ナカムラさんがわたしに何かの異常を感じとり駆けよってきました。
- 「どんげしたとや植田。鼻血や」
- 「あい!」
- 「おい!植田を寝かしてやれ!」
- 「あい!!」
- いつもは3年生以上に厳しい2年生がわたしを土の上に寝かせてくれました。
- 「植田はよう走りよっもんな。気合がはいり過ぎたっちゃろが」
- 「あい!」
- みんなのあまりのやさしさと勘違いにわたしは、もう夜でひんやりした土くれの上、こっそりにやにやでございました。
- ごめんなさい。
- 20020122
- 神奈川県・ゆうさん(36)のごめんなさい
- ディスカウントストア・ダイクマで警備員のバイトをしていた頃のお話でございます。
- 任務を端的に申せば万引き犯捕捉でございました。
- その日の来客のひとり、30代前半の男性がCD売り場でSターダストレビューのアルバムを手にしました。Sターダストレビュー。これは怪しいと直感し、あとをつけることに致しました。尾行を続けると彼は、CDを手にしたまま売り場を歩き回るだけでなかなかレジへ向かおうとしません。そのうちレジを素通りして店の外へ出てしまいました。
- 「あー、やっちゃったかあ…」
- 残念ですが任務でございます。彼を捕捉せねばなりません。彼の細い背中を追いながら次のように決心致しました。なるべく人通りの少ないところでやさしく肩を叩き、
- 「失礼ですが、そちらの商品、レジをお通しになりませんでしたね」
- あくまで真摯に声をかけよう。わたしのせめてもの情けでございます。そう自分の中で温かい気持ちに浸っていると涙があふれそうになりました。いけない。仕事中に泣いてはいけない。ふと見ると彼を見失っておりました。
- 「ああッ」
- 本当に泣きそうになりながらぐるんぐるんまわりを探すと彼が郵便局にはいっていくのが見えました。
- 「よかったッ」
- 全力で走り、その郵便局にはいると、彼は現金自動払い機の順番待ちの人の列に並んでおりました。しかもSターダストレビューがはっきりと見えるように手に持ったまま。
- 「え」
- おかしいと直感致しました。通常であるならば、まずこんなところで呑気に金をおろしたりはしないはず。いやその前にまず、盗んだものはさっさとどこかに隠すはず。
- 順番を待つ人もなくなり、現金をおろし終えた彼にやさしく声をかけました。
- 「ああのー、ここれ買ってないっすよね」
- どもってしまいました。答える彼はどもりませんでした。
- 「はい?あ!すいません!あーーうっかり持ってきちゃいましたあーしまったあすいませーん!」
- Sターダストレビューを手にしていたことを本当に忘れて店を出てきたのでした。
- 存在感の喪失。忘れ去られた演奏家。
- 寂しい熟語たちがわたしの心に浮かんで参りましたのは言うまでもございません。
- しかし、理由はどうあれ、買わずに商品を店の外に持ち出したのは事実。任務を遂行せねばなりません。自らのやさしい心を叱咤し、マニュアルどおり、店内の保安室まで彼を連行致しました。まったく抗うことはありませんでした。
- 保安室ではマニュアルどおりの取調べを行いました。
- 「こんなことしちゃだめでしょう」
- 「ほんっとすいません、手に持ってるの忘れてましたあ」
- 言われなくてもわかっている彼なのです。
- 「こんなことしなくてもあなただったお金出して買えるでしょう」
- 「買えますねえほんとにねえ」
- 財布はぱんぱんでございました。マニュアルとはむなしいものでございます。
- 「じゃあ、ご自宅にお電話してご家族に引き取りに来ていただきます」
- わたしはマニュアルどおりそう言い放つと、彼の家に電話をし、無愛想に出た彼の弟に兄を引き取りに来てくれるよう要請したのでございます。
- 5分後、気だるく迎えに来た20代後半の弟に、
- 「お兄さんがこのCDをまあ、お金を払わずに持ち出したんで、まあ引き取りに来ていただきました」
- わたしはマニュアルどおり説明致しました。
- 「あ、はい」
- 弟は、なんで俺がこなきゃいけねんだよの表情を前面に押し出して、それだけ答えました。兄である彼は、苦笑いを最前面に押し出したままうつむいておりました。そして兄は、すいませんでした、とややしっかりとした口調で謝罪し、彼らは弟、兄の順に保安室という名の地獄をあとにしてゆきました。
- さぞや兄はうちに帰ってからのち、弟にさんざん言われたことでありましょう。
- 彼は未成年でもなく、再犯の可能性もなく、そもそも万引きしたわけではないのですから、家族に引取りを要請する必要はなかったのでございます。
- ごめんなさい。
- 20020108
- 神奈川県・ゆうさん(35)のごめんなさい
- 「ピストル〜」みました。えらい客が入ってました。江角マキコが男ならお嫁に行こうと思います。田植えさんもこの人が女ならって人います?人会社なんで、敬語でいきます。けっ
- 津波 恵さんから上記の書き込みがありました。てっきり「ただやりたいだけの人って誰?」と訊かれたものと勘違いし、「F原紀香」と答えてしまいました。ごめんなさい。
- この人が女なら結婚してもいいと思える人。んー誰でしょう。思いつくままあげてみたいと思います。
- まずなんといってもPーターでしょう。あとはOすぎ。Pーコ。H幹二朗。M平健。K大路欣也。T間伸。T葉真一。D地康雄。I
武雅刀。S岡正二。M井国夫。
- こんな感じです。ごめんなさい。
- 20011201
- はるかさんのごめんなさい
- ワルサ世代って!(泣)
アタシいい子だったもん。
あ。時効の話。
あんま面白くないけど。
祖母と叔母と中華料理をホテルに食べに行ったときに
ホテルのトイレで高そうな石鹸入れ割りました。
そのせつはご免なさい。○○ホテルさん。
はい、うえださん後はまかせた(笑)
-
- 植田のフォロー
- テレビでは最先端評論家・渡辺満里奈が台湾をCMしています。
- 秋ですね。
- さて、まかされました。
- 場所はホテルです。従業員はそんなことまったく気にしてなどいません。なにしろホテルですから余裕です。どれくらい余裕かというと、トイレで割れた石鹸入れをクローク係が発見しても、ああそうですか、割れましたか、私どもはホテルですから余裕です、あ、そうだコート返さなくちゃ、忘れてた。手も洗わず戻っていきます。なぜか。トイレが職場ではないからです。
- そこが職場のひとつであるトイレ掃除のおばちゃんでさえも、ああよかった、やっと誰か割ってくれたのかい?うちゃあホテルだからさあ、こんなのたまにゃ割れてくんなきゃ、して、それにも笑顔でなきゃホテルらしくないじゃんよ、余裕だよおん、がははは。高笑いです。手は洗いません。なぜか。用を足していないからです。
- むしろその場にはるかさんのお母様とそしてあなたの子供がいなかったのが残念です。親子3代そろって、いかにたやすく物は割れるのか、語りあういい機会だったのです。
- 「ね、どんなに高そうな石鹸入れでも、こんなにも割れやすいの。わたしたち家族の絆は、どんなトイレの中でも壊れないようにしなくちゃね」
- おばあさまの言葉に親子3代、それぞれの体の乾き具合に見合った量の、それでも少なくともリットルレベル涙し、親子3代手を洗うのも忘れて、さ、帰ろ帰ろ、そそくさとトイレをあとにすることでしょう。なぜか。もう用は足したからです。
- はるかさんには早めの出産をお勧めします。面白くなくないです。またワルサ、教えてください。
- ホテルとは、いろんな意味で教育の場なんですよ。いろーんな意味でね。フフッ(高嶋政信で)。
- 今回は以上です。あんま面白くないけど。
- 20011104
-
- はるかさんのごめんなさい
- 学校行ってるって嘘ついたり
- タバコ辞めたって嘘ついたり
- いや、時効じゃなかろうや。
-
- 植田のフォロー
- 時効じゃありませんが、特別に掲載します。
- はるかさんのご両親へ。大声で言いましょう。お嬢さんは、学校行ってる、タバコ辞めたと嘘をついていらっしゃいます。イケナイ娘です。
- しかしです。その嘘は悪いことでしょうか。学校行かずにタバコ吸って、お嬢さんは何をしているか、お知りになりたいことでしょう。お嬢さん世代の生態に特に詳しいわたしが申し上げましょう。きっと、それはそれはものすごくイケナイことをしているのは間違いありません。行ってきますと家を出て恐らくマックの2階で紫煙を鼻から出しているのです、その足で群馬に行き、爆弾作ったり偽造パスポート作ったりは当たり前、もっとすごいことをしていることでしょう。これ以上は書けません。ご両親がお知りになったら卒倒されるでしょうから。トムとジェリーのように。
- ご両親。お嬢さんは実は、親孝行をされているのです。あるいは男にとっていい女に、いいえ、もっとはっきり言えば、いい妻になる訓練をされているのです。
- お嬢さんたちの世代はこれから先、アッシーくんにティファニーねだります、そしてあのいい色の紙袋になんかかわいい物いれて外出します、ぼろぼろになるまで使います、アッシーくんの車が故障するとティファニーは質屋行きです、早と慶二股かけて付き合います、結婚すれば浮気します、へそくりします、ほかで子供作ります、家建てます、トンネル会社作ります、韓国行ってエステします、整形します、ご両親の資産をテロに寄付します、宇宙旅行します、もうありとあらゆるイケナイことをします。でもそれが今の世の中のいい娘の実情なのです。いい女、いい妻の姿なのです。そしてそれがイケナイことだとちゃんとわかっている彼女たちはそのことを隠そうとします。それがもっといい娘、いい女、いい妻なのです。お嬢さんは今のうちからそうなろうと努力されているのです。
- 人様のために血も差し上げられないわたしからのお願いです。どうぞお嬢さんの嘘、おおめに見てやってください。ご両親への優しさの現れであり、いい妻になるための修行をされているのですから。
- もう一度だけ大声で申し上げておきます。お嬢さんは、学校行ってる、タバコ辞めたと嘘をついていらっしゃる、もんのすごくイケナイ娘です。
- どうしてわたしが謝るのでしょうか、ごめんなさい。
- 20011002
- 神奈川県・ゆうさん(35)のごめんなさい
- 先日、渋谷・東急プラザ前で友人を待っていました。わたしは大人。待ち合わせ場所に10分前には到着するようにしています。
- その日は15分前に到着し、きょうのわたし、大人5割増しだな、ひとり自分を褒めていると婦人が近寄ってきました。一度も染めたことはないであろう真っ黒髪をいくつかにゴムでとめ、黄色いTシャツ、タイトでもないルースでもないベージュの綿のスカートに白いリーボック。『氷雨』のヒノミカ似の彼女が目だけ笑ってない笑顔でわたしに、
- 「もしかして…イシダさん?」
- 訊ねてきました。わたしはウエダです。だからもちろん答えました。
- 「はい」
- 何か面白いことがありそうな予感があったのです。案の定彼女はそれから、
- 「あーよかった、そうかなあと思ってたんです、ほんとに来てもらえるかどうかわかんなくてドキドキして話しかけられなくて、じゃあここじゃアレなんで歩きながら話しましょうか」
- そう一気に話すとわたしをプラザ外に連れだしました。そして歩道にとめられた自転車にガンガンぶつかりながら歩きながら、ひとりしゃべります。
- 「であれなんですけどざっくばらんに話しますとね、(急に小声)このあと…、最後までお付き合いしますので…、わたしもそのいろいろ事情があのありまして…、その…、3万円で…」
- わたしは金がありません。だからもちろん答えました。
- 「ないんですよお」
- ヒノ似さんは絶句し、わたしの目と腰の当たりに視線を往復させた挙句、
- 「あ。やっぱり。ごめんなさい!あきらめます!きょうは!あきらめます!」
- 足早に246の坂をのぼっていきました。
- ヒノ似さん、そして本物のイシダさん、ごめんなさい。
-
- 神奈川県・ゆうさん(35)のごめんなさい
- 別のところにも書いたことなのですが。
- わたしは18歳で上京してきました。ある日曜日、映画好きなわたしは映画を見に行きました。新宿スカラ座です。だったと思います。映画は『グレムリン』でした。だったと思います。ここではその場所もタイトルもどうでもいいのです。友人Mと二人で見に行きました。前の回が終わり、ロビー脇で4・5列になって待っていたわたしたちは場内になだれ込みました。
- 「植田君、どうする?どの辺?前がいい?前がいい?」
- Mはそれまで見せたことのない引きつった顔で言います。
- 「え。え。うん。前。前」
- ものすごい人でした。映画館の大きさも席を探す引きつった顔の人の数も生まれて初めて見る規模です。
- 「植田君。あれ?植田君?前?前?」
- ものすごい人にぐちゃぐちゃにされ、引きつったMがだんだん見えなくなってきました。
- 「え。え。M君?前。M君?前がいい」
- わたしの、上京したての、訛りに気を付けながら叫ぶ声もかき消され、わたしも引きつっていたでしょう。先に引きつっていたMは全く見えなくなりました。Mともう二度と会えないんじゃないか。わたしは泣きそうになりました。そのときでした。背中が広広と開いた、体にぴったりとした赤い服を着た女の人が目の前に現れました。わたしは訳もわからずその人の尻に触りました。
- 「OH」
- 女の人はぴくりと言い、振り返りました。18歳、まだ童貞のわたしは顔をそむけました。
- 多分フィリピン人の、でも中村玉緒に似た女性の方、ごめんなさい。
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